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古い持ちビルを相続したら?家賃が入っていても先に確かめたい書類と、売るか決める3つの期限

葬儀が済んで少し落ち着いたころ、父が建てた4階建てのビルの通帳を開くと、2階と3階のテナントから今月も家賃が振り込まれていました。
これまで通り持っていればいいと思っていたのに、兄から「1階の店舗、いつから空いてるんやろ」「エレベーターの点検って誰に頼んでたん」と聞かれて、何ひとつ答えられなかった。そんな方に向けて、今回は古い持ちビルを相続したときに最初の1か月で集めたい書類と、持ち続けるか売るかを決めるための3つの期限を、大阪で36年、収益ビルや入居者のいる建物の売却に携わってきた不動産会社の立場から整理します。
目次
1. 相続したビルで、最初の1か月に集める5つの書類
2. 家賃が入っていても、手残りが読めなくなる理由
3. 売るか持つかは、3つの期限から逆算して決める
4. 兄弟で相続するなら、決める順番は「誰が持つか」から
おわりに
1.相続したビルで、最初の1か月に集める5つの書類

古いビルを相続した方の多くは、親の頭の中にしかなかった情報を書類の形で集め直すところで、最初につまずきます。家賃が毎月入っていると急ぐ理由が見えにくいものの、このあと出てくる相続税の評価も、売るか持つかの判断も、ここで集めた書類をもとに進めていきます。相続するか放棄するかは、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に決めることになっていて(民法915条)、その判断にもビルの修繕や借入れの状況が関わるため、四十九日を待たずに、できるだけ早く次の5つを手元にそろえてください。
・登記事項証明書(土地と建物。名義人と、抵当権が残っていないかを見る)
・固定資産税の課税明細書(毎年春に届く。評価額と、ほかに持っている土地がないかを見る)
・テナントごとの賃貸借契約書と、預かっている敷金・保証金の額
・修繕や点検の記録(外壁・屋上防水・エレベーター・消防設備など)
・建築確認済証と検査済証(建てた時期と、完成時の検査を受けたかが分かる)
名義人が父ひとりだと思っていたら、土地の一部が祖父の名義のまま残っていた、という話は珍しくありません。
どこに何を持っていたか分からないときは、法務局で亡くなった方名義の不動産を一覧にして証明してもらえる所有不動産記録証明制度(法務省)が使え、手数料は書面での請求で1件1,600円です。ただし登記上の住所と一致しない不動産は一覧に出てこないため、課税明細書に載っている土地と一つずつ突き合わせる作業はどうしても残ります。
賃貸借契約書は、相続人が新しい貸主の立場をそのまま引き継ぐので、とくに大事な書類です。テナントが出ていくときに敷金や保証金を返す義務も一緒に引き継ぐことになり、いくら預かっていて、その額が通帳の残高と合っているかどうかは、持ち続ける場合も売る場合も不動産会社や税理士から最初に聞かれます。
「昭和56年5月31日」より前に建てたビルかどうか
建築確認済証の日付が1981年(昭和56年)5月31日以前なら、そのビルはいまより緩い基準で建てられた「旧耐震」の建物です。国土交通省の住宅・建築物の耐震化の案内では、まず耐震診断を受け、足りなければ改修か建て替えを考えるよう呼びかけています。築45年前後のビルは、ちょうどこの境目の前後に建てられています。
2.家賃が入っていても、手残りが読めなくなる理由

「毎月家賃が入るのに、売るのはもったいない」と感じるのは自然なことです。比べるときは、家賃の総額ではなく、修繕費や固定資産税、空室の期間を差し引いたあとに手元に残る額で見てください。古いビルでは、この差し引く側の金額が、ある年にまとめて大きくなります。
国土交通省がマンションの大規模修繕工事818件を集計したマンション大規模修繕工事の実態調査では、修繕の周期は12〜15年が約7割で、工事費のうち外壁と防水の工事が大きな割合を占めていました。分譲マンションの数字なので賃貸ビルには目安として使うしかありませんが、築45年のビルなら3回目、4回目の外壁と屋上防水の時期が来ていてもおかしくありません。解体や改修の前には、元請業者がアスベスト(石綿)の有無を調べる解体・改修工事前の事前調査の義務(環境省)もあり、古い建物ほどこの調査と対策の費用も見込んでおく必要があります。
耐震の改修には補助制度もあるものの、使える建物は限られています。大阪市の耐震診断・改修補助は住宅が対象で、店舗などとの併用は店舗部分が延べ面積の半分未満であることが条件です。1階から3階が店舗や事務所のビルはこの条件から外れることがあり、使える場合も、令和8年度の申請は耐震診断が12月28日、改修工事が12月15日で締め切られます。
空室があると、相続税の評価は上がる
人に貸している建物と土地は、借りている人の権利の分だけ相続税の評価が下がります。固定資産税評価額1,000万円の建物が満室なら、借家権割合30%を差し引いて700万円で評価する、という計算例が国税庁の貸家の評価の説明に載っています。この減額は亡くなった日に実際に貸していた床面積の割合で決まるため、1階の店舗が長く空いていれば、その分だけ評価は上がってしまいます。
前の借主が出たあとすぐに募集を続けていた短い空室なら、貸しているものとして扱える場合もあり、土地の計算も含めて国税庁の貸家建付地の説明に条件が書かれています。
3.売るか持つかは、3つの期限から逆算して決める

相続の手続きには動かせない期限があり、ビルを持ち続けるか売るかをどの時点で決めるかによって、使える税の特例が変わります。気持ちの整理を待ってくれない期限は、次の3つです。
| 期限 | 何の期限か | 出典 |
|---|---|---|
| 亡くなった日の翌日から10か月 | 相続税の申告と納税 | 国税庁 相続税の申告と納税 |
| 相続を知った日から3年 | 相続登記の申請(正当な理由なく怠ると10万円以下の過料) | 法務省 相続登記の申請義務化 |
| 相続税の申告期限から3年(亡くなってから3年10か月) | 相続税の一部を、売ったときの取得費に足せる特例 | 国税庁 相続財産を売ったときの取得費の特例 |
3つ目は、相続税を払った人が期限までに相続したビルを売った場合の特例です。払った相続税のうちそのビルにかかった分を経費のように差し引けるので、売却益にかかる所得税と住民税が少なくて済みます。相続税の申告までに売るかどうかを決めきれなくても、亡くなってから3年10か月のうちに売れば特例は使えるので、兄弟で話し合える時間は思っているより長くあります。
持ち続ける場合は、小規模宅地等の特例(国税庁 No.4124)で土地の評価を下げられるかを確かめます。人に貸している土地は200㎡まで評価を50%減らせますが、亡くなる前3年以内に新しく貸し始めた土地は原則として使えず、申告期限まで持ち続けて貸し続けることなどの条件もあります。
実家の「空き家の特例」は、ビルでは使えないことが多い
親の家を売ったときに3,000万円まで差し引ける「被相続人の居住用財産(空き家)の特例」は、国税庁の空き家の特例の説明と租税特別措置法35条で、亡くなる直前に親以外の人が住んでいた建物や、区分所有の建物を対象から外しています。上の階に住居のテナントがいるビルは条件に当てはまらず、親が4階に住んでいた場合も、対象になるのは親が住んでいた部分の割合に限られます。ビルを相続した方からもよく名前が出る特例なので、この控除を入れて売却の手取りを見積もっていた場合は、その数字から見直しが要ります。
4.兄弟で相続するなら、決める順番は「誰が持つか」から

ビルを兄弟の共有名義で相続すると、あとで売ろうとしたときに全員の同意が要ります。民法251条では、共有している建物に大きな変更を加えるには、ほかの共有者の同意が必要とされていて、ビル全体を売る場合も同じように共有者全員がそろわないと進みません。相続した時点では仲が良くても、10年後に一人が亡くなり、その配偶者や子どもが共有者に加われば、集めなければならない同意の数は増えていきます。
そのため遺産分割の話し合いでは、ビルを誰が持つのかを最初に決めてください。一人が引き継いでほかの兄弟には預金などで調整する方法と、売ってから代金を分ける方法があり、どちらを選ぶにしても判断の材料はビルの査定額と、持ち続けた場合の10年分の手残りの見込みです。
テナントに出ていってもらう前提で考えない
借地借家法28条では、貸主から契約を終わらせるには、建物を使う必要性や建物の状態などから見た「正当の事由」が必要とされ、立退料を申し出たかどうかも考慮されます。建て替えや更地での売却は、テナントの退去が前提です。申し入れから契約が終わるまで6か月はかかり、交渉が長引くこともあるので、相続した側から退去を急ぐと負担が大きくなります。
入居者がいるまま、賃貸借契約ごと買主に引き継ぐ形で売る方法もあります。家賃の収入が続いている建物は、投資用として買いたい人や、入居者のいる物件をそのまま買い取る不動産会社にとっては検討しやすい物件です。大阪府の令和8年地価調査では、大阪市の商業地は前年より12.3%上がっていて、建物が古くても、土地の値段がこれまでと違う水準になっている場所は少なくありません。
おわりに
弊社の担当者にも、空室のあった収益ビルを預かり、空いている部屋のテナント募集を進めながら、1年半かけてオーナー様に納得していただける形で売却した経験があります。古いビルの売却は、書類と数字がそろうまでに時間がかかるぶん、早めに動いた人ほど選べる道が多く残ります。ご相談は無料査定・相談依頼フォームからお受けしています。
父が建てたビルを手放すかどうかは、気持ちの面でも時間がかかります。売ると決める前の段階で、まずは集めた書類と家賃の通帳を持って、いまのビルがいくらで売れそうか、持ち続けた場合に何年後にどんな費用がかかりそうかを並べてみてください。兄弟で話し合うときも、同じ数字を見ながらなら結論を出しやすくなります。
| 三和都市開発にご相談ください 1990年に大阪市で創業して36年。 収益ビルや入居者のいる建物、共有名義の不動産など、売却に手間のかかる物件のご相談をお受けしてきました。 持ち続けるか売るかを決める前の、書類と数字の整理からご相談ください。 |
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